Bossの日記

2009/11/8

お久しぶりです!

このサイトを見てくださっている皆様、長らく更新が滞っていました。サイト・オーナーが所属するオルゴール愛好家団体の秋季大会の準備などでこちらがお留守になっていて申し訳ありません。

10月31日の話なんですが、MBSI 日本支部(オルゴールの愛好家団体)の秋季大会が堺市で開かれました。今回のテーマはピアノの歴史と自動演奏ピアノ。古いピアノの修復などを永年しているMBSI 日本支部会員の工房に付属する小さな純木造のホールが会場です。古い200〜300年前の音の小さなピアノが主役なので参加者は25名ほど。宮廷やサロンで音楽愛好家が集まって、作曲した人に演奏を披露してもらうという昔の音楽会が再現されました。

最初は写真1のクリストーフォリの楽器、1709年に作られ3台だけが残っているフォルテ・ピアノの忠実なレプリカ。博物館に残されている実物のフォルテ・ピアノのレントゲン写真を元に、300年前の技法で当時と同じ材料を使って会員の方が復元したものです。コロコロとしたかわいい短い音で、高音をたくさん出したくなるピアノでした。演奏するのは会員のお友達で作曲専攻の女性教授。演奏家ではなくて作曲家、いろいろな時代と様式を把握しているので、どの時代のピアノでも相応しい奏法で即興演奏が可能。この楽器ではスカルラッティの様式の音楽を即興演奏してくれました。

全部で7台のピアノが登場、残りの6台は古いピアノを会員が修復したもの。エラール、プレイエル、シュトライヒャー、シュタインなど、全てペダルや鍵盤の機能が異なっています。低音側と高音側を別々に効かせることが出来るダンパーを備えたピアノ。膝で操作するペダルを持つピアノ。そして現代のベーゼンドルファーやシュタインウエイに組み込まれなくなったウナコルダという機構が付いていたピアノがありました、これはペダルを操作してハンマーが撃つ絃の数を変えるものです。普通は3本の絃をフェルトのハンマーが打つのですが、ハンマーの位置を左右に動かして1本だけとか2本だけの絃を打ってソフトな音を出す機能です。即興でこの機能をフルに使った曲を作ってすぐに演奏してもらいました。後で教授の方に尋ねてみると、調律作業がギリギリまで続いたので練習する時間が全く無かったそうです。

ベートーベンが愛用したメーカーのピアノに対しては轟然と耳を撃つ、力のこもった様式の演奏。ダブルエスケープメントという機構で、鍵盤が半分戻れば次の音が出せるというピアノでは、マンドリンのようなトリルを効かした演奏を聞かせてくれました。ショパンの特定の曲はこの機能が無いと楽譜どおりに演奏できないそうです。

ピアノの特徴を会員が説明すると、教授はその機能をフルに活かす2〜3分の曲を直ちに作曲しながら演奏して、聞かせてくれるのです。バッハの時代には作曲家と演奏家が同一人物で、即興演奏が当たり前だったようです。そのようなピアノと結構楽しそうに対話をしながら、この世に無かった新しい曲を瞬時に紡ぎ出す高度な技術を持った音楽家が今でも存在していることに感銘を受けました。

新しい発見、今まで聴いたことも無い演奏様式、初めて聞く貴重なピアノ、これだから、この趣味は止められません。